Category: すてっぷななの支援

自立生活アシスタントの仕事 その1

 横浜市は平成13年10月から市単独事業として「自立生活アシスタント事業」を開始しています.最初は知的障害を対象としていたのですが,平成18年度からは精神障害,平成22年度からは高次脳機能障害,発達障害へと支援対象者を拡大しています.

 知的障害はすべての区に事業所を設置,精神障害は14区,高次脳機能障害と発達障害については市全域で1か所ずつ(平成25年4月現在)の配置となり,すてっぷななでは高次脳機能障害の方への支援について委託を受けています.いまは作業療法士2名を配置しています.
 支援の内容としては,

  • 障害のある単身生活者などを対象に,障害特性を踏まえた生活力・社会適応力を高める支援をおこない,地域生活の維持を目標とする.
  • 本人の生活から障害のアセスメントを実施し,できることを増やすと同時に,難しい部分は社会資源につながるようサポートする.
    ⇒生活行為の「代行」ではなく,本人ができることを増やすための環境調整などをおこなっています

自立生活アシスタントの仕事
 本人の家や病院,会社へ同行・訪問などを繰り返し,本人の生活を支えるたくさんの人たちと協力しながら,本人が望む地域生活の実現に向けての支援をしています.

 というときれいなのですが…実際の生活は個性に富んでおり,一筋縄にはいきません.最近感じることは,本人の生活を支える人たちが,さまざまな知識や経験の持ち主であり,OTのなかで通じる感覚だけではコミュニケーションがとれないのです.病院でも「チームアプローチ」をしている意識があるかもしれませんが,教育背景が同じ「医療」の職種が集まっていることや,同じ法人理念のもとで働いている,という共通点があるのでまとまりやすい気がします.地域の小さな事業所では,常に外部の人たちと協力体制をとらなければ利用者への不利益だけではなく,事業所としての継続自体も危ぶまれます.具体的な現象を簡単に説明できる,みんなにわかる話し方を身につけることがとても重要だと感じます.「ひとつの事業所(ひとり)ではなにもできない」ということを常に意識する必要がありそうです.

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一泊旅行(平成23年度版)

 以前,「一泊旅行はどこに行くでしょうか?」と投げかけたままになっていましたので,ここでは旅行の様子をお伝えしたいと思います.

 利用者同士で話合いを重ね,今年の旅行は群馬の水上で「キャンプファイヤーをしながら花火を楽しむ」ことと,数年前から案として挙がっていた「乳搾り体験」に決まりました.

一泊旅行(平成23年度版) とは言っても10月のキャンプ場です.楽しみにしていたキャンプファイヤーは非常に寒く,火が燃え上がる前にみんなは早々に部屋へ戻っていってしまいました…今年も天候に負けた感はありますが,事前にみんなで予算を決めて花火を購入しに出かけたり,ランタンや懐中電灯を準備するなど,それぞれの楽しみはありました.

 乳搾りは,グリーン牧場へ行きました.ここは整地された場所だけではなく,芝生の上を歩いたりする場所もあるのですが,利用者のなかには車椅子を使用している方もいます.このとき,利用者同士で車椅子を押すのを手伝ったりと,私たちが期待している以上のナチュラルサポートがなされていました.一泊旅行(平成23年度版)職員が先回りして手を出してしまうと,このような場面を見ることはできなかったな,と感じました.
 今回の旅行で,その気づきを促してくれたのはバスの乗務員さんでした.昨年も同じ方が担当してくれていたのですが,「この施設の職員って何にもしないで,みんなにお任せですね」と言われたのです.一瞬なにを言われているのかわからなかったのですが,よくよく聞いてみると「他の施設では職員が親切になんでもやってあげている」ということだったのです.

 支援者はリスク回避が最優先になりがちですが,「利用者の能力や可能性を信じて任せる」ことも大切なことだと思います.だからこそ細やかな評価が必要であり,確かな技術で支援をすることが求められている,と改めて考えた一泊旅行でした.

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【問題】今年の一泊旅行はどこに行くでしょうか?

イメージ_ドライフラワー 今年も一泊旅行の候補地選びがはじまりました.行き先は利用者さんで話合いをしてもらっています.

 現在の候補地は…

  1. 屋外キャンプ(炊事・キャンプファイヤー・花火・テント張りなど)
  2. 栃木県(日光江戸村・千本松牧場)
  3. 茨城県(大洗水族館など)
  4. 長野県(松本城・チロルの森・上高地など)
  5. 千葉県(マザー牧場・鴨川シーワールド)

 です.

 どこになるでしょうか? みなさんも一緒に予測してコメントにお書き下さい.正解は決まり次第ご報告したいと思います.

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就労って難しい

イメージ_壁掛け このところ,障害者雇用をしている企業の担当者さんとご一緒する機会が多くなりました.
 やはり知的障害や身体障害が多く,高次脳機能障害は数的に少ないのですが,どこの会社も,職場環境や業務内容への配慮,手順書などを取り入れてくれている印象があります.

 ところが,セルフモニタリングが苦手な高次脳機能障害者には,この配慮がわからないのです.
 わからないことは仕方がないのですが,セルフモニタリングができないと,なんでも他者のせいにする…社会人としては未熟と言われてしまいます.

 どこの担当者の方も困っていることは「すみません」「ありがとう」が言えないことです.
 仕事ができないこと以前に,社会人としてのマナーが重要視されていることを意識して支援する必要がありそうですね.

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Aさんの場合

イメージ_ハカラメ AさんとBさんは,すてっぷなな利用開始時24歳.麻痺はなく,高次脳機能障害の症状も似ている2人.注意障害,遂行機能障害,病識欠如などが生活上に影響していました.でも受傷・発症後の将来の目標や生活イメージは異なっていました.面談や話し合いを重ね,今後の目標と支援の方向性を探りました.今回はAさんについて紹介します.

本人:「復職したい.それ以外の仕事はしたくない.」
家族:「症候性てんかんがあるので仕事は無理.」
支援者:「復職は難しいが,何らかの仕事に従事することは可能.」

 利用開始3カ月後の面談で,三者の足並みは揃いませんでした.このままでは平行線… 本人の気持ちはわかるけれど,若干固執傾向か?いずれにせよ特殊な技能を要する仕事なので,注意障害が残存する状態では難しいだろうな.症候性てんかんについては,薬と疲労に気をつける以外の方法はないし,治るのを待っていたらいつになるかわからない.まだ若いので,このままの状態で過ごすのはもったいない気がする.
 私の頭の中では,こんな思いがグルグルと回っていました.でも,この思いは本人と家族の考えとはかけ離れています.何か突破口はないかな?と日々探っていきました.
 「症候性てんかん」は三者共通の不安要素だったので,まずはここから検討することにしました.主治医からの情報によると,服薬は必要だが,日常生活に問題はなく仕事もOKとのこと.あとは発作の傾向がわかれば,不安要素も減るはずです.本人に日記をつけてもらい,様子を見ることにしました.
 すると発見が!どうやら発作が起こりやすい状況として,睡眠不足と疲労感がありそうでした.主治医に連絡,本人・家族へ説明をしていただき,「仕事に向かって頑張ろう」と方向性を示してもらうことにしました.

 ここまでで既に1年が経過.家族は働くことに対して前向きに考えるようになりました.あとは本人の希望をどう叶えるか…復職は無理,と言うだけでは納得できません.復職するために必要なことを本人と一緒に考えました.
 「こんな場面で注意力が欠けていたらどうなる?」「疲れやすくなってるけど,体力に自信はある?」などすてっぷななでの様子と職場での業務内容を合わせて話をしていきました.この作業に約半年.地道な,発展性の少ない話し合いにも見えますが,この過程を飛ばすと,すぐに振り出しに戻ってしまいます.

 話し合いを続ける中で,支援の方向性が見えてきました.本人の希望に寄り添い,支援者の思いと一致できるもの.それは復職の前に,そのステップとして別の仕事を経験することでした.
 就職して「働く自信」と「体調管理」を身に付ければ,その後キャリアアップとして元の仕事を目指せるのではないか,と提案したのです.本人も納得してくれました.この時点で利用開始から2年が経過しました.

 すてっぷななの利用期間は3年.退所して新しい仕事を始めました.現在,彼は「大変だ~」と言いながらも一生懸命働いています.自分のことだけではなく,会社のことも考えながら…とてもたくましくなりました.同僚とも楽しく過ごせているようです.
 先日,久しぶりにすてっぷななへ顔を出してくれたので,ゆっくり話をしたのですが「今の職場で頑張りたい」とのこと.しばらく見守っていきたいと思っています.

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足並みそろえてo(^-^)o

イメージ_カメ すてっぷななでは,9月と3月に利用者・家族・職員で面談を実施しています.個々の目標を確認し,半年の作業を振り返りながら「少しずつ目標に近付いてるね!」と言える場面にしたいのです.でも現実は… 本人の希望と家族の不安,支援者の思いが一直線になるためには相当のすり合わせが必要で,目標の設定自体がとても難しいのです.

 本人の希望は受傷・発症前の生活が大きく影響し,障害や症状よりも強敵だったりすることもあります.例えば,元々ゆる~い生活をしていた人に,規則正しい生活を…と言ってもどうにもなりません.越えられない壁?と私が凹むことも(´□`*)

 家族は受傷・発症当時の「怖かった」体験から,「生きててくれるだけで良い」という思いがあり,新しいことにチャレンジして本人が傷ついたらかわいそうだ…と不安な気持ちをぶつけてきます.

 そして支援者は,本人の希望と能力から将来の設計図を描いていきます.できるだけたくさんの可能性を想定しHappyになれる選択肢を探っていく,ちょっとした冒険です.

 面談を重ねるごとに,三者の思いが一直線に近付いていきます(難航する場合もありますが…).こうなれば,多少の困難があっても,めげることなく目標に向かって歩き続けることができます.足並みそろえて動ける日を目指し,頑張っていこうと思います.

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